04. 誰でも集まれる移動式食堂 どんぐり食堂

話を聞いた人:どんぐり食堂 代表 足立美樹さん

「子ども食堂」という取り組みが全国的に広がりつつあります。子ども食堂とは、経済的理由・家庭の事情などにより食事を十分に食べることができない子どもたちに、バランスのとれた食事を提供する目的があります。また、核家族化や少子化の影響で一人で食事を取る「孤食」も増えており、食事の時間を同年代の子どもたちや地域の人たちと過ごす、コミュニケーションの場としての役割もあります。さらには、豊かな食材による「食育」の機会、子どもに限らず「地域交流の場」でもあります。

「どんぐり食堂」は丹波市を中心に活動している移動式の子ども食堂です。地域の子どもたちを地域みんなで見守りながら育てていけたらいいな、という思いから、2018年10月に活動開始しました。市民活動ならではの柔軟で機動的、そして暖かみのある活動で地域の共感を得た活動が展開されています。

移動式食堂で、春日、市島、山南、青垣などで開催。利用する会場の特徴や雰囲気によって、たくさんの方に来てもらうものや、少人数でまったり過ごすものなどそれぞれの魅力がでている。

どんぐり食堂は建物としての食堂は持っておらず、地域の飲食店やコミュニティセンターを利用した移動式食堂です。子ども中心ではありますが、保護者や地域の人など誰にでも門扉が開かれ、食事はもちろん自由に過ごせてホッと一息つける「居場所」としても愛されています。2018年度には6回、2019年度には9回開催し、毎回40人程度が参加するなど、子育て世帯の親中心にクチコミやSNSで認知を広げてきました。

飲食店の営業許可がないところでは、調理実習としてみんなでご飯を作るところから活動を始めるなど、柔軟に子どもたちが食と触れる機会を提供。地域の人から持ち込まれたイノシシの骨付き肉にびっくりしたり、石臼を使ってのきなこづくりで昔の人の暮らしに思いを馳せたり、地域の高校生が開くカフェとコラボレーションしたりと、単なる食事だけではない思い出や体験ができる場となりました。

ピアノのある会場ではピアノ演奏と合唱がはじまる楽しい会に。また、高校生とのコラボ開催では、高校生と小学生がたのしくワイワイ過ごしたり宿題をはじめる子供たちも

「地域の子どもをみんなで見守り共に成長することを目指したい」そんな足立さんの思いに共感した人が食堂スタッフとして集まり、作業分担だけでなく意見のやり取りも活発に。場所を提供するお店はもちろん、材料面で協力する地域の農家さん、食器を提供してくれる地域の方など、たくさんの方の支えがあり、どんぐり食堂は定期的に開催することができていました。味噌作りやしめ縄づくりなどの伝統を教えてくれる人や着られなくなった洋服のフリーマーケットを開く人など、「子どもをみんなで見守りたい」思いから集まった様々な人たちが多彩な活動を行う場となり、人と人とがたくさん集まり繋がる場としてもどんぐり食堂は大好評を博しました。

伝統文化を教えてくれる地域の方、毎回、紙芝居をしに来てくれる方、会場内で子供服のフリーマーケットをやりたいという提案をしてくれる方など、人と繋がり合う活動も多彩に

2020年以降も継続して、人と人が触れ合う場としての移動食堂を計画していた足立さんたちでしたが、コロナ禍で人と出会うことや集まって食事をすることは難しくなりました。一方で、2020年2月末に突如はじまり、同年5月末まで続いた全国の小中高等学校の一斉休校では、子どもだけで昼間家にいる家庭が増え、食事の用意が困難になっているという声も届けられます。声を受け、どんぐり食堂メンバーはお弁当づくりを急遽決定。お弁当を特に求められる平日昼間にはスタッフも集まりにくく、スムーズな進行を行うのには課題がありましたが、社会福祉協議会を始め地域の各機関と連携し、困っている人に届けられるようなネットワークもできてきました。

メンバーの中からは「飲食店の人たちが工夫をこらしてテイクアウトの体制を整える中、私達が安いお弁当を販売するのはいいことなのだろうか」と自問する声もあり、そのことが「なぜ自分たちはどんぐり食堂をしたいと思い始めたのか」という原点に立ち返るきっかけとなりました。人と繋がる場所を作りたい、安心できる野菜を多くの子どもたちに届けたい、子どもたちにおなかいっぱいごはんを食べてほしい。それぞれの立場や想いをシェアする機会となり、自分たちの活動の目的意識が高まったのです。

2020年は、春日町の春日部荘を拠点とした4月・5月の休校中のお弁当販売と配達が大きな転機に。そのなかで「広い会場で距離を取りつつ、人と人とが集まって一緒にお弁当を食べられないか」という意見も出てきました。場所を借りられないか相談しに行った市島町鴨庄地区にて、「場所は貸すけれど、貸すだけじゃなくて一緒に活動できないか」と嬉しいお声がけを受け、地域支援会議に参加。さらに鴨庄小学校PTAも共に計画する形で、11月29日には鴨庄コミュニティセンターにて『子ども食堂と憩いのサロン』を開催。どんぐり食堂は弁当55個の調理を担当しました。

2021年に入ってからは、1月と3月市島町・来古里にて弁当の販売を行いました。69個販売したうちの32個は配達され、買い物などが難しい家庭の力になりました。ここでも、『子ども食堂と憩いのサロン』で協働した鴨庄地区自治振興会がチラシの全戸配布に協力をするなど、人とのつながりがどんぐり食堂メンバーを支えています。

こども食堂をやりたい!と声を上げた足立美樹さん。コアメンバーは足立さんをいれて4人。
毎回の食堂は、随時10名程度で切り盛りする

さらに、コロナ禍においても「食」にとどまらない活動も開始。子どもたちがお弁当をお宅に届ける「子ども配達員」は、お弁当を受け取られた方にサインをもらい、そのサインをあつめることで子どもたちの新たな学びに繋がるうれしいことを企画中。楽しみながら、子どもたち自身が自然と地域福祉を学べる場作りを、と活動を工夫しています。

子ども配達員の取り組みでは、最初はあまり積極的ではなかった子も、配達先の相手が喜んでくれることで、やる気や楽しみが沸いてきて、段々と子どもたちが自主的に配達先を計画して進めるようになった

 2022年度に向けては、やはり集まってご飯を食べられる場作りということでパーテーション等感染症対策の準備をすすめる他、2020年に始めたお弁当販売も継続予定。お弁当販売にはたくさんの協力者が必要となるので、一緒に活動する人も募集しています。一人暮らしのお年寄りで食事がままならない方や、介護保険で平日は生活できても土日の食事に困っている方、子育て中の障害がある方や、その他制度の網から漏れてしまっているが困っている方など、地域の「ちょっと困った」をすくい上げられる存在であれるよう、協議・活動を深めていきたいと願っています。

どんぐり食堂
連絡先など詳しくは以下のホームページやFacebookページから。

https://www.tamba-plaza.jp/dongurisyokudou/

https://www.facebook.com/tambadongurisyokudou/