01. 丹波市子ども・若者サポートセンター

話を聞いた人:丹波市子ども・若者サポートセンター センター長 後藤 光さん

今や100人にひとり程度がひきこもり状態にあると言われるほど身近な社会課題であるひきこもり。しかし実際には、ひきこもりの状態にある方や、その家族は悩みを抱え込みがちになり、また支援体制も専門知識のある方の領域のみと考えがちで、支援施設が地域の中にあっても周囲の人たちは知る機会や関わる機会があまりないのが現状です。そんな中、地域の方々には知る機会となり、ひきこもり状態にある方には社会とつながる機会となる「市民サポーター」の設置や、農家・作家・事業者など異質な方々との接点づくりなどを通して「社会的つながり」を生み出し、コロナ禍で進む孤立や分断をも乗り越えていこうと奔走する「丹波市子ども・若者サポートセンター」の活動を紹介します。

丹波市氷上町香良に支援拠点があり、相談(予約制)や居場所の提供を行っている。

「丹波市子ども・若者サポートセンター」は、生きづらさを感じている若者を総合的にサポートし、社会参加できるようにコーディネートをする相談窓口として、2016年に開所しました。臨床心理士、精神保健福祉士キャリアコンサルタントなど専門的知識を持つ職員を中心に、不登校やひきこもりなどの悩みを抱える若者とその家族をサポートしています。ここでは支援を受ける若者たちを「主役であり出演者」という思いを込めてキャストと呼んでいます。(丹波市内にある別事業所「志進館」の呼び方に感銘を受けて)また、支援する側・される側という関係性ではなく、お互いに支え合う者同士という意味も込められています。

サポートセンターの取り組み内容は大きくわけて「相談支援」「居場所活動」「地域での支え合い」の3つ。相談支援では、臨床心理士などが、ひきこもり状態にある本人や家族の相談を受けています。多くの場合、家族の方からの相談から始まります。まずは、家族の想いに寄り添いながら、本人の様子をお聞きし、家族と本人の良い関係を構築するお手伝いをしています。家族の本人への対応の変化が、本人の気持ちの変化に繋がり、来所にも繋がっていきます。来所時には、面談を通して、本人の気持ちを最優先に支援プログラムを立て、共に歩む役割を担っています。

少人数の時もあれば、色々な年代・立場の方々が、支援する側、される側でなく、ともに楽しむ時間を過ごせる時もある居場所活動。

居場所活動は、キャストの方が安心して過ごせる居場所をつくるものです。センター内に設けられたフリースペースのほか、丹波市内の住民センターで出張居場所も開催しています。家庭以外で過ごす時間や、周りに人がいる環境でひとときを過ごすことに前向きになって一歩踏み出すときに、安心してゆったりと過ごせる場所として、テレビゲームや読書など一人でできることから、わいわい皆で楽しむ卓球などのスポーツまで、様々な遊びを企画しています。

毎月発行される居場所カレンダーはFBページでも公開されている。

そして、地域での支え合い活動では、地域とキャストがつながるネットワークづくりをおこなっています。この活動が加速したのは、コロナ禍で屋内での居場所活動が難しくなったことがきっかけでした。たくさんの人が集まることが難しい状況で、屋外で自然と触れ合える活動に取り組みながら、職員だけではなく、地域の人たちと居場所をつくることでできることを増やそうと考えていたところ、地域の方の発案で空き家の裏庭でフキを採らせてもらったことが始まりです。

センター長の後藤さんは、地域との接点づくりにまさに奔走。「まずは自分が足を運んでみて」と居場所やつながりを地道に増やしている。

これまでキャストとかかわりを持つのは、職員がほとんどでしたが、地域の方との交流はキャストたちにとって新鮮な出会いであり、貴重な就労体験であり、人との関わりを体験できるものでした。一方で、地域の方たちもサポートセンターの取り組みを知ったり、若者の生きづらさやひきこもりについて考えたりするきっかけとなりました。

農家の方の畑で作業体験は、室内では味わえない開放感と楽しさがある「青空居場所」

これを機に、丹波市内の地域活動団体や事業者の方々と少しずつ繋がり、農作業の手伝いや就労体験、ものづくり体験など、居場所活動の幅が広がっています。また、これまでは居場所の中で完結していたことが次の展開に繋がるケースもでてきています。例えば、手芸セミナーで完成させた小物は、これまでは持ち帰るのみで終わっていましたが、地域団体の方に声がけをしてもらって、市内のフリーマーケットで販売したり、クラフト作家の方々に講評をもらったりと、ひとつの出会いが次の機会を生み出すという効果も現れています。

キャストの個性や魅力が活かせる場、評価される場が生まれる。

サポートセンターの受託団体であるNPO法人ニュートラルでは、地域との接点づくりを行うことで、居場所活動の幅やアイデアが広がり、多様な人とのかかわりを通して相互理解も深まり、地域社会の受け入れ土壌がつくられると考え、2021年2月に、地域での支え合い活動のひとつとして市民サポーターが設置されました。

市民サポーターへの期待は大きく、多くの方が関わってくれることを願っています。というのも、ひきこもり相談の入り口や、社会体験や就労体験などの出口付近では、地域の繋がりが重要になるからです。

多くの方に関心を持っていただくことで、相談につながりやすい街の気運が醸成され、社会参加や就労体験を受け入れてくれる団体や事業所などがあることが、キャストたちの選択肢や可能性を広げます。

後藤さんの資料より厚生労働省の支援の段階を表す図。専門家の地道な支援とともに、入り口と出口を市民サポーターの力でフォローアップしたいと説く。

現在、サポーターは10名程度ですが、今後に向けてサポートセンターでは、市民サポーターを募集するとともに、研修会などを開催してサポーターとして関わりやすい環境を整えていく予定です。市民サポーターと言っても、居場所活動での話し相手、将棋やオセロの相手、一緒にスポーツを楽しんだり、裁縫や編み物を教えたりと、気負わずに自分自身も楽しめるものです。楽しみながら、自分のもっているアイデアやネットワーク、場所などを提供することでキャストたちの次の可能性が広がる、そんな活動に参加してみませんか。

丹波市子ども・若者サポートセンター
丹波市氷上町香良42
TEL 0795-88-5070
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