03. お米deつなぐ助け愛プロジェクト
話を聞いた人:柏原地域支えあい推進会議 委員長 田中義人さん
コロナ禍で経済に困窮する人が増える中、人と人がつながる機会も減少し、まちづくりにも新しい課題が出てきました。柏原地域には地域の関係者が定期的に集まり、地域の生活上の困りごとについて協議する「柏原地域支えあい推進会議」があります。地域生活の視点で物事を捉えた勉強会を2016年から続けているほか、2018年に「推進会議」として組織した後は、地域ニーズと地域資源のマッチング、関係機関や地域組織とのネットワークづくり、つながりへの地域意識の向上等様々な支えあいへの環境づくりを行っています。ここでは、長年の住民活動の蓄積の上に立って、コロナ禍で出てきた新たな課題と向きあう「お米deつなぐ助け愛プロジェクト」を中心にご紹介します。
柏原地域支えあい推進会議は、旧柏原町内のそれぞれの地区が持つ特色や文化を尊重しながら、大切にしていることを共有してつなぐ場として生まれました。これまでの自治協議会の事業は、恒例化した行事のための行事となっていて、委員長の田中さん自身、地域の人の生活から乖離している感覚があったといいます。もっと今のまちの現状にフォーカスした活動をしたいという思いから、市社会福祉協議会の地域支えあい推進員の支援を受けて、「地域生活を考える勉強会」が始まりました。求めれば応じるで、知識や経験豊富な講師が身近にもあり、福祉の転換時期を捉えた講師を次々に招致。地域の人々の潜在的な興味関心につながる学びが多く、8回の勉強会で延べ参加者数が567名と、地域住民や福祉団体、関係機関から多くの参加がありました。その参加者の中から「ともに活動しよう」という方があり、協議体としての活動が形になってきました。
勉強会の開催は、自地域支えあい推進員や南部包括支援センターの支援の下で、柏原自治会長会、柏原・新井の両自治協議会、柏原民児協等、地域の協働体制の構築にも繋がりました。現在は隔月で会議を行い、点(グループや団体等)を含めて地域を面と層で捉え、生活者がもつ課題解決に向けた地域の環境づくりに取組んでいます。自治会長向けの勉強会や、「いきいき百歳体操」の推進、認知症者援助活動の支援、献血推進、定例会での講演会などその活動は多岐に渡ります。地域内で立体的な人とのつながりを構築する中で2020年、新たに始まった活動が「お米deつなぐ助け愛プロジェクト」です。
支え合いの実践に向け、トップダウンではなくそれぞれが考える機会を持つように呼びかけている。
プロジェクトのきっかけは、2020年5月に開催された柏原地域支えあい推進会議において、地域支えあい推進員から新型コロナウイルスにより生活福祉資金の相談が急増している話を耳にしたこと。すぐに「地域で出来ることはないか」を話し合い、その結果、地域でお米を集めて、生活にお困りの方へ届ける「お米deつなぐ助け愛プロジェクト」を企画することとし、分配については市社会福祉協議会で行うこととなりました。また、外国人など、既存の支援で洩れがないかも検討し、分配先も協議しました。この支えあい推進会議は参加者が並列の位置づけ、自由な雰囲気であるからこそ、活発に意見交換が行われアイデアもたくさん生まれます。生活困窮という地域課題に、地域資源のお米を結び付け、JA丹波ひかみ柏原支店の協力も得て、柏原地区全戸にチラシを配ることから活動を開始しました。
お米deつなぐ助け愛プロジェクトの様子。地域への信頼感を持って投げかけた呼びかけに、多くの関係者が応えた。
2020年6月に行われた「お米deつなぐ助け愛プロジェクト 2020」では、地域のお米生産者はもちろん他地域からも含めて631kgもの米が集まり、必要とする方に1袋5㎏の精米を届けることができました。始める時はどうなるのかヒヤヒヤしていたという田中さんたちも初めての取組みがうまく行ってホッと一息。手ごたえと同時に継続の必要性を感じ、コロナ禍2年目となる2021年9月にも「お米deつなぐ助け愛プロジェクト2021」を行い、前回を上回る800㎏のお米が集まりました。活動の成果が出たことで、柏原地域支えあい推進会議の方たちには、「信頼できる私たちのまち」という地域への誇りも生まれたといいます。しっかりした地域とぶれない方向性を持つ組織だからこそ、お米へのニーズはもちろん他のニーズにも応え、つなぐことができるということを再認識しました。2022年のプロジェクト継続も視野にいれながら、今は新たな課題へ協議を重ねています。
柏原地域支えあい推進会議 委員長の田中義人さん。地道に勉強会を繰り返し開催していくことで、だんだんと興味関心のある意識の高い人たちの集まりになっていった。幅広く集まるよりもまずは関心のある人から集めていくことが必要だと話す。
活動の中で柏原地域支えあい推進会議の方たちが大切にしているのは、「できることを楽しんで行い、共感を広げる」という姿勢。地道に一つずつ、しかし無理なく継続できる形をとり、ないものを探したり作ったりするのでなく、もともと地域にあった豊富な資源やマンパワーを活かして活動をしてきました。地域の中に同じ思いを持つ人は必ずいるので、大切なのはきっかけづくりだと田中さんは話します。集まったメンバーは熱意を持った方ばかりなので、義務感が少なく自発的に活動が生まれていきます。地域の視点から丹波市地域福祉計画の理念に沿って、誰もが暮らし続けられるまち(ノーマライゼーション)、孤独を許さないまち(ソーシャルインクルージョン)を念頭に置き、柏原地域支えあい推進会議では地域をつなぐきっかけをつくろうと、取り組まれています。
柏原地域支えあい推進会議
問合せ先
丹波市社会福祉協議会柏原支所
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